子どもの心に注目しよう!

 

 近年、学級崩壊やいじめ、不登校などの子ども問題が、学校現場だけでおさまりきらず、メディアを通じて社会問題として表面化してきています。

 子どもの自殺や殺人など、生命に関わるような深刻な事件が、報道される数も増えてきており、凶悪粗暴な少年犯罪も増加傾向にあります。

 

 私たち大人は、これらの報道を耳にすると『子どもの心』を心配すると同時に、「学校が悪い!」「親が悪い!」と、誰かに責任をなすりつけて簡単に非難してしまいます。

 しかしながら、誰かを悪者にしただけでは問題は解決されません。テレビの中の遠い話と感じている方も多いと思いますが、実は凄く身近な問題なのです。

 

 子どもは、自分自身を客観的に見ることは上手く出来ませんし、問題を感じていても的確に表現することは困難です。その上、問題解決へと前進していくための知識は少なく、経験もまだまだ足りない状況にあります。

 

 このような子どもの問題に対応していくことが求められた場合、子どもへの援助に必要な基礎知識が必要になります。いじめや虐待の問題に苦しみ、自分で解決することも出来ず、上手に「助けて!」というシグナルも遅れない子どもたちの心は、深く傷付き、心の健康が害された状態にあるのです。

 

子どもたちの状態を理解し、まず現状を把握していきます。そして、いじめ問題や虐待、不登校などの問題から子どもの障害など、多面的に子どもの心についての理解を深めていきます。

 

 

  不登校問題を理解しよう!

 

 最近では、特定の子どもが不登校になるのではなく、誰でも不登校になり得ると言われるほど、不登校児童の数が増え続けています。

 教育機関もこの事態を深刻に受け止め、スクールカウンセラーの導入など様々な対応を試み、不登校の問題に真剣に取り組むようになってきました。

 

 このような献身的な対応が少しずつ評価されつつある半面、まだまだ問題に対応しきれていないのが現状です。

 問題に対応しきれていない状況の背景には、家族問題や学校での集団生活、子ども自身の性格である集団への適応の困難さなど、不登校独特の問題の複雑さが影響を与えているためと考えられています。

 

 不登校を示す子どもの状態は、その子どもによってそれぞれ違いますが、ここでは、一般的によく見られる不登校の子どもの特徴について学びを深めていきましょう。

 

 あなたは何故、子どもが学校に行けなくなると思いますか...?


 不登校の子どもたちが学校に行けなくなる理由は、その子どもによって違うため、断定することはできません。

 しかし、カウンセリング現場から不登校になる4つの要因として、1)友達が作れない2)期待に応えようとし過ぎてしまう3)家庭の問題4)いじめなど不快な出来事の体験が指摘されています。

 

 では、この4つの要因を1つずつ詳しく説明しましょう。

 

1)友達が作れない

 

 1970年代頃の日本の子どもは、小さいうちから幼いきょうだいの面倒を見たり、家の畑仕事を手伝っていました。子どもは、働き手として家族の中で居場所を獲得し、家族が子どもの労働力を必要としていたのです。

 

 このため、今ほど物には恵まれなかったものの、きょうだいや近所の友人など、豊かな人間関係の中で生活することによって、自然に対人関係から多くの事柄を学んできました。

 また、この頃の子どもの遊びは、子ども自らが能動的に行動しなければ成立しなかったため、子どもたちは遊びを通して、自分で考える力や物事を工夫する力、そして他者とのコミュニケーションを取りながら問題を解決する力を、自然に身につけていたのです。

 

 それに引き替え、現代の子どもたちは、電化製品が普及し、誰かと遊ばなくてもゲームやテレビを見ているだけで十分楽しめてしまいます。このため、他者とのコミュニケーションの取り方を学ぶ機会が急激に減り、自ら他の集団に参加し、そこで自然に学ぶという機会が得られにくい状態なのです。

 現代の子どもたちは、人間関係の中で円滑に行動する技術を、習得しにくい状況にあり、いざ集団に入っても上手に人間関係が築けないほど、コミュニケーション能力が低下しています。

 

 このため、学校に行っても仲間という集団の中で、楽しい時間を過ごすことが難しく、相手に応じた接し方が分からなかったり、自分の欲求をどこまで伝えていいのだろうかという、コミュニケーション方法がわからず、孤立してしまうこともあるようです。

 

 このような状況では、学校に行っても孤立感を増してしまうだけになり、次第に学校に行くことがつらくなってしまうこともあります。

2)期待に応えようとし過ぎてしまう

 

 親の期待に応えようと過度に頑張ったり、教師の評価を気にし過ぎてしまうことで、学校に通えなくなる子どもがいます。

 この子どもたちは、絶えず優秀な成績を修め、友達からも一目置かれるような存在である反面、”いい子”を演じ続けなければならない事に、過度なストレスを抱えてしまっているのです。

 

 親や教師の期待に応えようとし過ぎる子どもは、子どもらしく振舞うことができません。いたずらをしたり、少し怠けるなど、適度に力を抜くことができないため、過度に頑張りすぎたり、周りの目を気にし過ぎたりすることに疲れてしまい、学校に通えなくなることがあるのです。

 それに加え、このような子どもたちは、親や教師から評価を得ることに執着してしまうため、同級生の仲間に対して、評価を勝ち取るライバルとしてしか見ることができず、孤立感を抱くこともあります。

 このような背景から、次第に集団に適応しにくくなり、学校へ通うことが困難になってしまうことがあるのです。

3)家庭の問題

 

 親子間の信頼関係が築けておらず、子どもの生活基盤である家庭が揺らいでいると、子どもが安心して学校に通えなくなることがあります。

 子どもは初めて親子間で『信頼関係』を学びます。ここで子どもが安心感を得ることができない場合、他者を信頼することができず、集団にも適応しにくい状況に陥ってしまうことがあるのです。

 また、家庭の『躾』は、学校での集団生活に強い影響を与えます。給食を上手に食べることや、制服から体操服に着替える更衣、順番を待つなど、集団に適応するための基礎が、家庭で身に付いていない場合、子どもは学校での集団生活に適応できなくなってしまうことがあります。

 

 このように集団に適応できないと、子どもは孤立してしまい、学校で自分の居場所を見つけることができず、学校に通えなくなってしまうこともあるのです。

 

4)いじめなど不快な出来事の体験

 

 人間関係から心に傷を受けてしますと、誰でも人間不信に陥ったり、傷つけられた集団から逃げたいと思ってしまいます。

 特に、『いじめ』など集団から酷く傷つけられる経験は、子どもに強いストレスと、大きな傷を与えてしまいます。

 

 『いじめ』については、「②最近のいじめ問題を知ろう!」で詳しく説明しますが、不登校の原因の重要な一要素として、社会的にも広く認知されている問題です。

 

 コミュニケーション能力が身に付いておらず、自分の意見も上手く伝えることができない場合、いじめなどのトラブルに巻き込まれてしまうことがあります。

 

 また、教師からの執拗な叱責や体罰などの不快な出来事によって、教室に居場所を見つけられなくなり、学校に通えなくなる子どももいるようです。

 

 これらの要因は、いじめによく見られる要因として挙げられていますが、不登校の問題は、その子どもによって原因は様々です。

 

 不登校になってしまった子どもたちは、学校への恐怖心や、友人関係での揉め事から、心に大きな傷を負っていることがたくさんあります。子どもの心の声を聴き取り、しっかりと理解しましょう。