夢が心を表している?

 

 

 私たちは、夜眠りにつくと夢を見ます。

 

 

 夢の内容は様々で、あまりにも現実離れしていたり、凄く身近な人が出てきたり、その時々で登場人物も物語も異なっています。この、私たちがよく見る”夢”に注目して、心を理解しようとした研究者がいます。

 

 

 その研究者は、フロイトとユングです。ここではフロイトの夢への解釈を紹介しましょう。

 

 

 フロイトは、『夢は、その人の無意識に通じる道である』と考え、多くの臨床例を元に夢を分析していきました。

 

 

 しかし、私たちはフロイトの理論を知らなくても、あまりにリアルな夢を見たり、身近な人が亡くなるなどの夢を見ると、現実の生活を振り返ることがあります。

 

 

 例えば、「最近、人をたくさん殺して最後に自分も死んでしまう夢を見たんだけど、何かあるんじゃないかって心配で...」など、夢が予知夢のような働きをすることは、多くの人が経験していることでしょう。

 

 

 そもそも、日本には「一富士、二鷹、三なすび」の夢を見ると縁起が良いとされ、歯が抜ける夢を見ると悪いことが起こるなど、古くから数々の言い伝えがあります。

 

 

 「しょせん夢は夢」と軽視する人もいますが、気になる夢を見ると何となく現実と結び付け、そこに何かを期待するという伝統的な思考は、まだまだ私たちの中に根強く残っているのです。

 

 

 ではここで、フロイトの夢分析を元に、心が夢にどのように現れるのか?

 

 

フロイトの夢分析

 

 

 フロイトは、夢を『歪められた代理物』として位置付けました。つまり、無意識内に抑圧された願望や衝動が歪められて、意識に現れているのが『夢』ということです。

 

 

 無意識の欲求が歪められて現れてきた夢は、夢を見た本人にも理解できないほど歪められているため、夢を見た本人には、その夢の本来の意味や意図は分かりません。

 

 

 フロイトは、夢が歪められてしまう理由について、本当の願望(性的衝動)を表現してその望みを成就させたいという欲求と、それを抑圧しようとする力との葛藤が強い影響を与えていると考えました。

 つまり、無意識の部分であまりに自分が認めたくない内容を、少し形を変えて夢に見ていると言うのです。

 

 

 

 ではここで、夢を実際に解釈してみましょう。

 

 

 

 

 歪められた夢を、私たちはどのように理解したら良いのでしょうか?

 

 

 この疑問に答えをくれるのが、『象徴解釈』です。象徴解釈とは、夢に出てくる事柄の背景には、どのような無意識が隠されているかを明らかにさせたものです。

 

 

 例えば、”何かに追いかけられてしまう夢”を見る場合には、恐れていることや自分につきまとう何かから、”逃げたい”と思っていることを示していたり、逆に”自分が何かを追いかける夢”の場合は、何かを探求していることを示しています。

 

 

 また、”落ちる夢”を見る場合は、不安感や不安定さ、意識や自我の喪失、死を表しているとされ”戦いの夢”が見られるときには、外敵との戦いではなく自分との戦い、つまり内面の葛藤を表していると言われています。

 

 そして、あまりいい気分で目覚めることが出来ない”死の夢”は、一般に心の再生を意味すると言われています。死は想像しただけでも不安に付きまとわれる事象ですが、古いものが死ぬことによって、新しいものが生まれるという解釈を進めていきます。

 

 

 しかし、これらの『象徴解釈』は”絶対”と言うものではなく、夢を解釈する際に、用いる便利な方法の1つです。夢に出てきた事象に対して、夢を見た本人に連想してもらうことも重要なので、象徴解釈だけに頼らないように注意しましょう。

 

 

 

 

 

 私たちは、夢に現れる事象に対して、自分が傷付き過ぎないように無意識下で、ストレートな表現を避ける傾向があるようです。

 

 

 このような夢を解釈することは、”自分自身を理解する”という点では、大いに役立つと思われますが、身近な人の夢を勝手に分析するなどの安易な行動を取ってしまうと、相手を傷付ける恐れがあります。


 夢を見た人は、自分自身にあまり大きなショックを与えないために、無意識に欲求を歪めて夢を見ています。自分でも気付きたくないことを、他人にばらされることは、触れられたくない傷に無理矢理触れられるのと同じことです。

 

 

 他者の無意識部分に触れる可能性があるときは、慎重な態度が必要です。相手を傷付けないかをしっかりと考えて、相手に伝えてもいいことなのか考える時間を持つように配慮するなど、言動に注意をしましょう。!!